約 2,307,744 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2268.html
キズナのキセキ ACT1ー1 不機嫌の理由 □ 「デュアルオーダー?」 伏せていた顔を上げ、大城大介の言葉を繰り返す。 見れば、大城は雑誌のページを広げてこちらに見せながら、愛想笑いで頷いた。 「お前なら、真似できるんじゃないかと思ってさ」 またバカなことを言い出した。 俺はため息をつく。 「アホか。そんなものが簡単に真似できるなら、苦労はない」 雑誌は「バトルロンド・ダイジェスト」。 最新号の特集は、最近注目の神姫たちである。 その最後の方、一人の神姫マスターが紹介されていた。 バトルネームを『尊(みこと)』というそのマスターは、素性はわからないが、今密かに注目を集めるマスターだそうだ。 彼の神姫は、フブキ型とイーダ型のプロトタイプの二体。 フブキの方は『盗賊姫』の異名を取り、対戦相手の武器を奪いながら戦うスタイル。 イーダ型は異名こそないが、パワーファイトを得意としながらも、壁走りまでするほどの機動力を持っているらしい。 バトルで二体の神姫を同時に扱う……そうした特殊技術を『デュアルオーダー』、それを使うマスターを『双姫主』という。 同系統の神姫であれば、わからないでもない。 だが、この記事にあるマスターのように、全く性質の異なる二人の神姫を同時に戦わせることができるなんて……まず記事の信憑性を疑うべきだ。 そもそも、デュアルオーダー自体を、俺は都市伝説のたぐいだと思っている。 神姫のマスターならば分かると思うが、バトル中は神姫一人扱うのでさえ、手一杯になってしまう。 刻々と変化する状況の中、マスターは相手の作戦を探り、現状を把握、両神姫の状態確認、作戦立案に神姫への指示、とやることは山ほどある。 それを別々の位置で戦う二人の神姫に同時に行うという。普通のマスターであれば、とても出来ない芸当である。 双姫主になるには、常人離れした情報分析力、空間把握能力、瞬間的な判断力、そして卓越した指揮能力が必要だ。 そういった前提を考慮して、 「俺には無理だ」 結論を大城に告げた。 それでもなお、大城は不満な顔をする。 「でもよ、お前がバトル中に、ティアに出す指示は、俺たちよりずっと細かいぜ? ティアに集中している分を半分くらい別の神姫に振り分けて指示してやればできそうなもんじゃんか」 俺はため息を付いた。 そんなに単純なものではないのだが。 だが、俺の言葉に納得がいかないようで、大城は是が非でもデュアルオーダーを俺にやらせたいようだ。 大城の奴は意外に頑固である。 「仕方のない奴だな……だったら、試しに俺が神姫二人同時にバトルさせたらどうなるか……やってみるか?」 「そうこなくちゃな!」 「ただし、ステージとか、バトルの条件は俺に従ってもらう。いいな?」 「いいとも」 ■ 見慣れた廃墟の街並みの中、わたしは全速力で駆け抜けている。 背後から、フローティング・エンジンの音が聞こえてくる。 虎実さんの『ファスト・オーガ』カスタムタイプが追い縋ってきている。 わたしは振り向き、スピードを落とさないまま、背中向きに走って、虎実さんと対峙する。 わたしの脚には、モーターで駆動するローラーブレードのようなものが取り付けられている。 ランドスピナー。 マスターが作ってくれた、わたしだけの装備。 装着されたレッグパーツは、わたしの身体と直接接続されて、思いのままに、本当に身体の一部として使うことができる。 このランドスピナーを使いこなすのが、わたしの戦い方。 縦横無尽な動きで相手を攪乱したり、攻撃を回避したりして、有利に戦いを進めていく。 限られたステージでしか戦えないし、空を飛ぶことも、大きな武器を持つこともできないけれど。 わたしはこの装備がとても気に入っていた。 このレッグパーツを使いこなすのに、膨大な時間を訓練に費やした。 だから、後ろ向きに全力で走りながら戦う、なんてこともできるのだった。 手にしたサブマシンガンで、虎実さんを撃つ。 大きなエアバイクを軽やかに操り、弾丸の連なりをひらりとかわす。 虎実さんは、また腕を上げたみたい。戦う度に無駄な動作が削ぎ落とされているのが分かる。 今のは牽制。当たらなくてもいい。 それにしても、このバトルは奇妙だった。 八重樫美緒さんの神姫・パティさんとわたしが組んで、大城さんの神姫・虎実さんと対戦するツー・オン・ワン。 しかも、わたしのマスターがパティさんとわたしの指揮を担当する。 武装神姫のバトルでは、マスター一人が神姫一人を指揮するのが普通だ。 そして、マスターから事前に言われたのは、マスターの指示は絶対遵守、指示方法は事前に打ち合わせ、攻撃については神姫のわたしたちが各自判断、ということ。 たとえば今、 『ティア、直進、二○・四八。パティ、左、二二・五二』 暗号のように短縮された指示が、耳に聞こえてきている。 これはただ、移動方向と位置を示すだけで、その間の攻防については、わたしたちのアドリブに任されている。 いつものマスターの指揮方法とは違う。 なぜマスターはこんな変則的なバトルをしているのだろう? さっきの大城さんの話……デュアルオーダーに影響されたのかしら。 そこまで考えて、わたしは一度、思考を切る。 今はバトル中。 ファスト・オーガに据えられたミサイルポッドが火を噴いた。 勝手知ったるストリート。 わたしはランドスピナーを細かく動かし、連続でターンしながら爆風を避けた。 『ティア、二○・四二、T字・右。パティ、二二・四二で左構え』 もうすぐT字路。 まだ視界は爆煙に隠れている。 わたしはステップを踏んで前を向き、正面に向かって加速する。 この瞬間に、虎実さんと距離を取る。 マスターはここで何か仕掛けるはず。そう思ったので、距離を作ってみた。 エアバイクが、黒い煙を蹴散らして、飛び出てきた。 一気に加速してくる気配。それでもまだ、先ほどよりは距離がある。 行き止まりの壁が迫る。 わたしは高速ターンでT字路を右に曲がった。 その時。 『ティア! ウォールライドで逆に走れ! パティ、左構えで狙え!』 マスターの鋭い指示は最小限。 高速ターンから立ち直ったわたしは、左の壁を一気に駆け上がり、そこでくるりと回って、今度はT字路の反対側へと壁の上を走った。 壁走りはわたしの得意技。 わたしが壁を走り出したそのとき、虎実さんがT字路にハングオンで突入した。 「もらったああぁぁ! ……って、えぇ?」 右に曲がって、地上にいるであろうわたしに狙いを付けた、のだと思う。 でも、そこにわたしはおらず、かわりに、少し先の上空から飛び出してきて、狙いを定めるパティさんを見つけてしまった。 虎実さんはあわてて、振り向いた。 わたしと、ガンサイト越しに目が合う。 「ちょ、ちょっとタンマ……」 『撃て!』 虎実さんの制止の言葉より早く、マスターの短い指示が来た。 わたしとパティさんは、同時に引き金を絞る。 「うわわわわわーーーーーっ!?」 素っ頓狂な声とともに、虎実さんは敗北した。 □ 「すごおおぉい……」 感嘆の声を上げたのは、パティのマスターである八重樫さん。 彼女の仲間三人とも、並んで今のバトルを観戦していた。 みんな、俺を賞賛してくれているが……。 「もう二度とやらん」 そう呟いて、俺は椅子の背もたれに全体重を預ける。 えらく疲れた。 「でも、完璧だったじゃないですか、ティアとパティのコンビネーション! 二人とも別々に動いているのに、最後はT字路で位置を入れ替えての挟撃なんて」 そう言ったのは、俺の一番弟子を自称する蓼科涼子さん。 俺の弟子を自称するなら、もっと注意を払って観戦するべきだと思うが。 「あれは詰め将棋だ」 「詰め将棋?」 「そう。最初から決めていた動きを指示しただけさ」 俺は頷く。 今のバトルで、臨機応変な対応なんて一つもなかった。 ティアを囮にして虎実の相手を一人に集中させる。 その間にパティは見えないところから、具体的には、少し離れたビルの上すれすれを滑空しながら、二人に併走する。 二人がT字路に差し掛かったところで、パティは空中で待ちかまえる。 ティアは反転し、壁走りで虎実の後ろを取る。 虎実からは、T字路を曲がったところで、ティアとパティが入れ替わったように見えただろう。 虎実が慌てたその一瞬で勝負を決める。 「こんな作戦が当たったのも、俺が虎実の性格や戦い方をよく知ってたからだし、ティアとパティも俺の言うことを忠実に実行してくれたからだ。 それに、二対一だったことも大きい」 それでも、二人の動きを追うのにえらく神経を使ったし、タイミングを合わせるのも大変だった。 これが通常のバトルで作戦なし、敵が複数だったら、間違いなく俺の守備範囲を超える。 想像するまでもなく、俺には無理な芸当だった。 「双姫主ならば、二カ所で起きているバトルを同時に、リアルタイムに把握できるはずだ。 それは単純に神姫二人の動きを見ていればいいわけじゃない。おそらくは二人以上になる相手神姫の行動も把握し続けなくてはならない。 それも、まったく未知の神姫を相手にして、だ。 それで最低限。それでも、俺の詰め将棋よりも遙かに高度な技術だ。 そこにバトルにまつわる要素が絡んでくるわけだから……デュアルオーダーがどれだけ特殊な能力か、わかるだろ」 双姫主には、バトルがどんな風に見えているのだろうか。 武装神姫のマスターは誰でも、バトルをある程度俯瞰的な視点で見ている。 それで、周囲の状況を把握し、神姫に指示を出しているのだ。 双姫主と呼ばれるマスターは、それよりもさらに上の位置で俯瞰してバトルを見ているのではないか。 あるいは、二カ所で起きているバトルを同時に、ほかのマスターと同様の視点で見ているか……。 もしかするとその両方を行っているかもしれない。 どちらにしろ、離れ業だ。 俺はゆっくりと首を振った。 「でもまあ、この尊ってマスターは興味を引かれるな」 神姫を二人操れるだけで、話題に上るほどの実力を得ることはできない。 双姫主であってなお、頭脳的なバトルを行っているということだ。 特に『盗賊姫』の異名を取るフブキ型は面白い。相手の武器を奪って戦うなんて、口で言うのは簡単だが、相当な技術が必要だし、相手を翻弄する戦術も必要だ。 尊というマスターが、ただデュアルオーダーに頼っているだけでないことが分かる。 もし機会があったら、その『盗賊姫』と対戦してみたいものだ。 大城が、なぜかほっと息をつくように言った。 「相手が双姫主でも、一対一なら勝ち目があるんじゃねーか?」 「どうでしょう……二人に振り分けていた指揮能力を、一人のバトルに注ぐなら、もっと緻密なバトルを展開できるのかも」 「そうだ、師匠、今度はわたしの涼姫とティアのタッグを見せてくださいよ」 「あたしは、デュアルオーダーを相手してみたいな」 「あ、俺も」 チームの仲間たちは俺の囲んで談笑している。 なにやら安堵したような空気。 ああ、なんだ。 つまり……俺は気を遣われていた、と言うことか。 □ 仲間たちが俺に気を遣ってくれるのには理由がある。 俺はここ最近、あまり機嫌がよくなかった。 それが態度に出てしまっているのだろう。 反省しなくてはならない。 不機嫌の理由は二つあった。 一つは、俺の家庭の問題だ。 海外赴任していた父親が、久しぶりに帰ってくる。 近々会って話がしたい、と連絡があった。 それだけでも気が滅入るというのに、よりによって、その話というのが自分の再婚話だというのだから、バカにしている。 母さんの死に目にも来なかった奴が、別の女性と結婚だと? 普段の俺を知っている人が聞いたら目をむいて驚くだろう、と自分でも思うほどの勢いで、電話先の男に罵詈雑言を浴びせかけた。 しかしそれでも、奴は親権を振りかざし、無理矢理顔を合わせることを約束させた。 胸くそ悪い。 だが、学費や生活費を出してくれているのは奴だ。 子供を放置している親の責任として、せめて金くらい出すのは当たり前だと思っているが、ここで会合を拒否して仕送りをストップされるのもつまらない。 俺は渋々頷いた。 俺は小さい頃から、自分の父親が大嫌いだった。 もう一つは、久住菜々子さんに会っていないことだった。 菜々子さんは、俺の武装神姫チームでも一番の凄腕で、『エトランゼ』の異名を取る有名プレイヤーだ。 明るくて気さくな性格の美人で、誰もが彼女を好きだし、プレイヤーとして尊敬している。 そんな菜々子さんは、なぜか俺と付き合っている。 彼女の反則な笑顔を見るとドギマギするが、それ以上に心が満たされる。 その笑顔を、もう三週間ほど見ていない。 最後に会ったのは、年明けすぐの初詣の時だっただろうか。 メールや電話で連絡を取ってはいる。だが、ゲームセンターに来ることはなく、あちこち飛び回っているようだった。 詳しくは知らないが、彼女は彼女自身の用事に振り回されているらしい。 こういう気分が悪いときには、菜々子さんの笑顔と前向きな言葉が欲しいと思うのだが、致し方がない。 そんなわけで、俺は不機嫌な様子が態度にでるほどに、心がささくれ立っていたのだった。 ■ マスターには申し訳ないけれど、わたしは幸せを噛みしめていた。 ここのところ、大した事件もなく、わたしたちの周辺は平穏だった。 マスターとの訓練はもちろん、一緒にいる時間も多くなっていて、わたしは嬉しかった。 ゲームセンターに行けば、チームのみんなや、常連さんたちが、笑顔で話しかけてきてくれる。 バトルや練習の相手も事欠かなかったし、バトルしないときには神姫同士で集まって話に花を咲かせたりする。 もう誰も、わたしたちを、マスターを傷つけようとする人はいない。 そんな当たり前の時間が、わたしにとってはなにより嬉しく、大切だった。 この場に、親友のミスティがいないのが残念だったけれど。 今、彼女はマスターの菜々子さんと一緒に、あちらこちらのゲームセンターを回っているみたいだった。 『エトランゼ』の異名通りに。 □ 今思えば、このときにはもう、取り返しのつかないところまで事件は進んでいた。 俺は気がつくのが遅かった。遅すぎたのだ。 その夜、携帯端末にかかってきた一本の電話で、俺はその事件を知ることになる。 かけてきたのは、久住菜々子さん。 表示を確認して、少し心が浮き立つ。久々に声が聞ける。 通話ボタンを押す。 「もしもし」 『……』 無言。 俺は一度、耳から携帯端末を離し、着信の表示を確認する。 確かに、菜々子さん……だよな。 もう一度端末を耳に付ける。 聞こえてきたのは、低くくぐもった、叩くようなノイズ。 風の音。 外か。 「菜々子さん、どうかした? 今どこにいる?」 俺の問いかけに、電話先は沈黙を守ったままだった。 俺は待った。 辛抱強く、待った。 明らかな異変に心がざわめき、嫌な予感がじわじわと浮き立つ気持ちを浸食していく。 それでも彼女の返答を待った。 やがて、聞こえてきた、一言。 『……負け……ちゃった……』 消え入りそうな、かすれた、泣き声。 その一言が、この物語の始まりだった。 言い忘れていた。 俺の名前は、遠野貴樹。 一介の武装神姫のマスターだ。 この物語の、いわば、狂言回しである。 ■ このときの菜々子さんの言葉の意味を、わたしは理解していなかった。 負けた、という一言に、どんな意味が込められていたのか。 ミスティに何が起きたのか。 この後、マスターとわたしは、菜々子さんを取り巻く事件の渦に巻き込まれていく。 そのことさえ、この時のわたしには知る由もなかった。 わたしの名前はティア。 遠野貴樹の武装神姫。 この物語の、もう一人の狂言回しだ。 □ いや、彼女の一言は始まりではない。 正確には、もうずっと前から物語は続いていたのだ。 始まりは五年前。 狂言回しである俺たちこそ、後から付け足された出演者だったのかも知れない。 どこまで正確に語ることが出来るか分からないが、とりあえず俺なりに語っていくこととしよう。 『エトランゼ』と呼ばれた少女と、ミスティと名付けられた神姫が紡いだ、絆の物語を。 次へ> Topに戻る>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1222.html
第三話「学校」 ※ヒカル視点 午前8時00分 「じゃ、学校行くから」 私のマスター『彩聞形人(さいもん けいと)』が言った 「そう言えば形人の学校って、どんな所?ついて行っていい?」 「駄目だ。MMSは持ち込み禁止になってるからな」 「ケチ!」 だって…彼女かなんかいるかどうか気になるもん… 彼女とかがいたら、私…… あ、そうだ! ※形人視点 午後12時15分 あー…腹減った… 早くメシにしよう そう思い弁当を取り出したところ、違和感を感じた。 「…何か軽いな…?」 よく見ると、弁当箱は普段のものではなく以前使っていたものだった。 「まさか…」 予感的中 一言で言ったら、弁当じゃなくてヒカルが入ってた。 …ってオイ 「……」 「…てへっ♪」 「てへっ♪じゃねぇよ!!」 「彩聞、どうした?大声なんか出して?」 「いや風間(かぜま)何でもないから!弁当開けたら『てへっ♪』って書いた紙だけが入ってただけだから!」 「…そういやお前の母ちゃん、冗談好きだったからな。なるほど」 ああ中学時代からの友よ、勘違いしてくれてありがとう。 「でも矢瀬には気をつけろよ。アイツは神姫嫌いだからな」 う…ばれてる… 「なにしろアイツがMMS禁止を生徒会に訴えた奴だからな」 あーわかってるさ我が友よ もうメシの事なんてどうでもよくなっていた。 弁当箱を持ったまま、僕は屋上へと走り出していた 「何でついて来たんだよ!」 「……」 「答えろ。じゃないと三日間エスコン禁止にするぞ」 「……だって…だって彼女とか出来たら私の事なんて見なくなるじゃん!」 は? 「私が認めない限り、彼女なんてつくらせないんだから!」 やべ、泣き出しちゃったよ… 「スマン。つーか彼女なんて僕ともっとも縁のないものじゃないか」 「グスッ…ホント?」 「それよか静かにしろ、あの委員長に見つかったら…」 「わたくしがどうかしたかね?」 そこにはヤセ形眼鏡の典型的なヤツがいた。 あ、やべ。 僕は現在、全速力で逃亡中。目下スネーク中である 「ほれ言わんこっちゃない、アイツは神姫に片思いの相手をを取られたから神姫にうらみを持ってんだ」 「あの人男だよ?まさかウホッな人?」 「その通り、ヤラナイカ系の奴だ」 そう、ヤツはホモである。 「そこのダンボール!止まれーっ!」 まずい、見つかった!? 「ダンボールが動いてるんだからあたり前じゃん」 やかましい! 僕はダンボール箱を捨て、再び全速力で走り出した その直後、誰かにぶつかった ※ヒカル視点 いたぁ~… 形人の胸ポケットに居た私は思い切り床に叩きつけられた 誰かにぶつかったみたい…って女の人!?てゆうか形人!胸触ってるって! …って相手の胸ポケットに居るのはMMS?(かも) 私は相手がMMSである事を祈り、ハンドサインで返事を送った (MMSの敵に追われてる!そっちのマスターにこの状況を何とかしてくれる事を頼む) 相手(やっぱりMMSだった)はこちらに気付き、指でOKサインを作った ※形人視点 「あ!…すまん!」 反射的に飛び上がる しかし地獄への使者はあと3mへと近づいていた! もう駄目か!? 「あら?こんな所にいたの?、捜したわよ」 は?コノヒトハナゼボクヲサガシテイルノデスカ? 「お!氷男(ひお)先輩、アンタんとこの会員ですか?」 「そうよ。さっきから捜してたけどこんなとこでスネークしてたのね」 そう言って氷男と呼ばれた女生徒はこちらにウインクした そして声を出さずにこう言った (わたしはドール愛好会の会長、状況は教えてもらったからわたしに合わせて) なるほど、胸にMMSが居る。ヒカルが説明したのか 「あーそうなんすよ会長!ちょっと次回検討されてる鬼ゴッコの練習をちょっと…」 「…どうゆう愛好会なんだ…?まあいい。警戒態勢が最近敷かれてるから気をつけるんですよ」 そう言って矢瀬は去っていった。なんとゆう変わり身の早さ… 所詮先輩には弱いとゆうことか。 ※ヒカル視点 「すみません、助かりました」 「あら、いいのよ。あの人は裏返しで真面目みたいだから」 「にしちゃあ度が過ぎてるよなぁ…」 「わたしは『氷男聖憐(ひお せいれん)』ドール愛好会とは名ばかりの武装神姫愛好会の会長よ」 神姫愛好会?やっぱりあるんだ 「こっちはラリー、天使型(アーンヴァル)よ」 ラリーと呼ばれた神姫(こ)は無言でこちらに一礼した。てゆーかラリーってまさか… 「あ…僕は彩聞形人と言います。こっちがヒカル」 「よろしくお願いします。氷男さん」 「あら、普通でいいわよ。あとわたしの事はレンでいいわ」 言葉の最初に「あら」がよく付く人だな… 気のせいか形人が彼女に見惚れている… 面白くない… ※形人視点 「それよりも、放課後バトルロンドで対決しない?」 はい?何故いきなり? 「何となくよ、それじゃ、3時半に神姫センターで」 否定も質問の間もなく走り去ってしまった…。何なんだ一体? 「ところで形人…」 「何だ?」 「あの神姫(こ)…『片羽の妖精』ね」 そうかいお前もそう思ったか 第四話に続く 次回予告 よう、え?だれかって? そんなこと知ったこっちゃない。 次回「バトルロンド」(N:ラリー) 武装神姫でいこう!?に戻る トップページ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/83.html
<明日の為に、其の1!> 「これ以上戦えぬ者に手を出す気はありません、再戦を楽しみにしています。」 また今日もいつものように戦闘停止を申告し、結果的にはドローになる。 8戦やって0勝0敗8分、デビューしてから毎回この調子なのだ。 どうやら自分の趣味が彼女に変な価値観を植えつけてしまったらしい。 そもそも巷で大流行の武装神姫を購入する予定は一切無かった。 仕事で散々扱ってきたのに、病気で休職中の時まで見たくなかったのが正直な感想だ。 「リハビリ兼ねて、お前のボーナスは現物支給でコレだから。」 とは上司の台詞である。 本来は開発に携わった人物がバトルサービスに関わるのは好ましくないのだが、 神姫本体では無くバトルサービスのシステム開発部である事と、 ある種の市場調査を兼ねての特例との事らしい。 その際に都合良く休職中の自分に白羽の矢が立った訳だ。 こうして、我が家にフルチューンされたストラーフがやって来たのである。 正直、戦闘用フィールドばかりを手がけた為か、何から手をつけるのかすら知らない。 名称は事前に”エスト”として登録してもらっているので、とりあえず起動? 「はじめまして、今日からよろしくお願いします師匠。」 「おう、よろしく・・・って師匠!?」 「そのように呼称設定がなされておりますが、何か問題でも?」 「いえ、面倒なのでそのままで結構でございますです。」 面倒だからと初期設定を友人に任せるのは、余計に面倒な事態を引き起こすようだ。 起動から数時間、すっかりウ○ザードやト○ーズ閣下に感化されたようだ。 闘いの美学がどうとか、エレガントにとかブツブツ言いながら武装を選定している。 上司に渡されたカタログでスペックを確認してみるが、どうやらサード程度なら武装無しでも問題無いらしい。 某シューティングの1面で上上下下左右左右BAを使うようなものだろうか。 などと馬鹿な事を考えているうちに気に入った武装を発見したようだ。 自分の2倍弱程の長槍を満足気に振り回している。 「それって懐に入られると邪魔になりそうだな。」 「甘いですね師匠、ちゃんと中心で分割されて2本の槍になります。」 「それはそれは、無知で申し訳御座いませんねー。」 「だからお前は阿呆なのだ!」 いや、それ師匠と弟子の立場が逆だから。 「で、火器の類は見当たりませんがどうすんのさ?」 「そんなエレガントじゃない武器は必要ありません。」 言っても無駄なのを理解したので、残りのパーツで飛行ユニットをでっちあげて 勝手に護身用の銃器を仕込んでおいたのは別の話だ。 こんな調子でこれからやっていけるのだろうか。 師匠と弟子
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1945.html
『セルノとぼくの初対面』 「…あいからず重い」 四階建て団地の階段をのぼりつつ、ぼくは呟いた。 2036年にもなって未だに階段しかない設計はどうかしていると思う。 それに、今背負ってるデイバックに入ってるものが重すぎるのだ。 武装神姫を買ったのは初めてではない。 現に今、家の中で猫がグースカ寝ていることだろう。 今回は二人目、新発売の子をお迎えしたわけだ。 しかし本体+クレイドルは非常に重い、こんなに重いものなのか? 「重心が後ろに偏ってるんだから、転んでもおかしくないよなぁ」 つるっ 「あ」 きのう降った雨のせいで階段が滑りやすくなっていた。 で、足を滑らしたわけだ。 いくらなんでも、話題をだした途端に起こらなくても… とか考えてたら、床に叩きつけられた。 だけど、パンパンになっていたデイバックのおかげで頭をぶつけずに済んだ。 すごく鈍い音がしたけど大丈夫かなぁ…。 「ぅぎゃう~ぅっ」 なんかうめき声が聞こえるので、その場でバッグを開けた。 クレイドルは無事だが、本体の箱がつぶれている。 中身を取り出すと小さな手がビクビクふるえながら伸びてきた。 「大丈夫かい?」 這い出てきた小さな少女は青い目でぼくを見据える、目に涙をうかべながら。 「い、痛かったです…」 彼女は"ゼルノグラード"、Arms in Pocket社の新商品だ。 「ごめんごめん。でも助かったよ、きみの箱のおかげで頭を打たなくてすんだからね」 「自分より箱ですか…orz」「そういうわけじゃないって!」 その後彼女をなだめるのに、ぼくは数時間を費やしてしまうのだった。 こうして、ぼくとゼルノは出会った。 著者:第七スレの6 単発作品用トップページ トップページ
https://w.atwiki.jp/2019tkoolcontest/pages/76.html
私のギルドとラビリンス 感想ページ 名前 コメント プレイ時間は裏ボスまで倒して14時間ほど。最終レベルは99。呪いで魔王の姿に変えられたお姫さま。これに乗じて金儲kゲフンゲフン···お姫さま救出のため動き出すギルドの物語。楽しい要素盛りだくさんなRPG! ダンジョンはフロア数は少ないですが部屋が多く、探索しがいあり!裏ボスはかなりの強さですが、新たな仲間、転職や錬金と色んな要素を上手く使えれば攻略は可能です!そして何といっても交渉パート!相手によって出方を変えて交渉するシステムがすごく面白い! 初っぱなの魔女の口の悪さにビックリしましたが(あと、姫にも)、その後も続々と個性の強いキャラが出てきて飽きを感じませんでしたね!エリアごとの最後の交渉バトルがとても熱かったです!エドガーさん、まさにラスボス。色々詰まっていて語りきれない名作!☆5! -- 啓太 (2019-11-20 09 04 23) 弟(とギルドメンバー)がダンジョンから持ち帰った素材を使って兄が交渉バトルをするRPG。 素材を消費すると交渉力が増えるので、手強い相手と交渉するには複数の素材を持ち帰らなければならない。 交渉バトルは面白いし勝利後に店の商品が増えるので、次の交渉の為に先へ先へと進みたくなった。 ストーリーが進行すると仲間が増えたり転職可能になったりアイテム合成が出来るようになる。 魔法使いが作ってくれる各階へのワープポイントが便利。 各階にはボスがいて倒すと下の階へ行けるのだが、それとは別に強いシンボル敵がいる。 強敵がいるので合成でいい装備品が出来ると嬉しい。 アイテムやキャラの紹介文が腹黒い兄の主観で書かれていて面白い 約5時間10分でクリア メンバーは弟、ダルトン、ミハイル、スフィーダ(全員職業は初期のまま)。 LVはスフィーダだけ35で他は37。 その後約7時間50分で裏ボスを倒してもう一つのEDを見た。 「裏ボスは転職しないと倒せないかな?」と思ったけど合成で作った装備品と クリア後に加入したメンバーのおかげで何とかなった。 -- 十嶋ゆうき (2019-07-20 09 57 24) 探索パートと商談パートを切り替えながら攻略するコミカル探索RPG 探索パートはウィザードリィのような拠点と迷宮を行き来するタイプ。 職業、編成の自由度が高め。 商談パートはあまり見たことない路線なので新鮮でした。 ストーリーはギャグ多め、登場人物ほぼ全員アホの子か外道という凄まじさ カオス。 そんな中にも結構重いセリフも出てくるので侮れない。 兄さん口調のアイテム解説文がなかなかイカしている。 全体的にきれいに仕上がっているのですが 戦闘バランス、パラメーターが大味な点はマイナス。 最終セーブは4時間半、クリアLvは99+69 編成は弟、メディナ、エリザベス、ミハ お気に入りはメディナさん、エリザベスおb お姉さま。 楽しかったです、ありがとう。 -- R774 (2019-06-29 11 22 48)
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1437.html
戻る トップへ 空を仰げばまだ暗く、西はまさしく宵闇で。 だが一方、東の空は薄らと朝日の光が垣間見える。 頬を撫でる風は、朝の冷えた風だ。 がたがたと揺れる自転車のかごの上、山と詰められた新聞紙の上に座りながら、秋の早朝を堪能する。 「パーシ、次はどこだ?」 後方から声がした。私のオーナー、宗太だ。 「ん~……三丁目のぉ水野さんちかなぁ」 インストールされたナビシステムが示す場所を答える。 遥か彼方には薄明が見えた。 「三丁目か……ちょっと急ぐか」 宗太が呟くのとほぼ同時、自転車がガクリと大きく揺れて、頬を撫でる風が強くなった。 ちょっと振り返ると、宗太がいわゆる立ち漕ぎの状態になっていた。 周囲の風景が早く流れていく。まるで、飛んでるみたいだ。 「宗太ぁ、5m先、目的地ぃ」 「おう」 閑静な住宅街。普段からあまり人通りの多くない場所で、早朝の今は動くモノは皆無だ。 その中にある、立派な二階建ての民家が今度の目的地。 そこは私も、宗太も良く覚えている。 何故なら、こんな時間にも関わらず、朝刊をわざわざ受け取る代わり者がいるからだ。 「おはよーございます」 宗太は眠そうな声を隠しもせず、そこに居る人物の前で自転車を止めそう言った。 「毎朝ごくろうさま」 眼鏡をかけた、細長い男性。この家の人だ。 この人は何が楽しいのか、毎朝私達から朝刊を受け取っている。 「今日の朝刊ッス」 足元が大きく揺れた。私が立っている新聞の山から新聞が一つ引き抜かれた。 「どうも。若いのに大変だね」 少し低い、優しげな声。 「仕事ですからぁ」 宗太の代わりに私が答える。このやりとりも毎朝の事だ。 宗太が高校に入り、学費+αを稼ぐために始めたバイトの一つであるこの新聞配達。 その初日、偶然知り合った私達はそれから毎日、このやりとりをしている。 「そんじゃ、次があるんで」 「最近冷えるから、気を付けてね」 その声を受け、宗太は自転車を走らせた。 「……兄ちゃん、新聞来た?……」 「……最近良く読むね、ア……」 空は明るさを増している。町が、動きだす。 空は青く、海の様に蒼く。 雲は波の様に漂い、流れて行く。 人が溢れかえるこの道。人が雲の様に、波の様に流れて行く。 「はっ、はっ、はっ、はっ……」 その中を、まるでマグロの様に?き分ける者が、一人。 白く息を吐き、だらしない制服をはためかせ、人の波を潜る者が一人。 肩から下げた鞄は不規則に揺れ、中身は滅茶苦茶に……。 「宗太ぁ、急ぐのは良いけどぉ鞄は揺らさないでくれる?」 「やかましい!」 切羽詰った形相で宗太は怒鳴った。 遅刻しそうで焦る気持ちも分るけど、そう言われるとカチンと来る。 「良い詩が浮かびそうなのに、それを台無しにする気ぃ!?」 「おめぇの詩なんてどうでもいいだろうが!」 全力疾走に近い速度で走りながら怒鳴れるその体力にはほとほと呆れ返る。 何より、私の詩を馬鹿にする事が頭に来る。 「どうでも良くないわよぉ! もしかしたらぁ月刊・詩で取り上げられるかもしれないじゃない!」 「んなわけありえーねってーの!」 走る速度が一段上がった。 学校までは残り2,3分で到着だろう。 だが、そんな事よりも大事な事がある。 「何であり得ないって言いきれるのよぉ!?」 「んなもんどう考えたってそうだろーが!」 もう学校の校門だ。周囲の生徒の大半は走っているが、宗太程では無い。 というか、宗太程の速力があったところでバカだったら台無しなのだが。 「何がどう考えたらそうなのよぉ!」 「第一、詩を書くサイフォスなんて聞いた事ねーだろ!」 下駄箱に着き、一瞬で靴を履き替える。下駄箱を出て直ぐ左に曲がり、その先にある階段を駆け上がる。 階段を三段飛ばしで上がるたびに私が入っている鞄が大きく揺れる。 こういうトコに宗太のバカっぷりが表れている。 「私が第一号になるわよぉ!」 「あーそうかい、そいつは良かったな!?」 三階に到着すると、靴底がゴムの上履きがキュルキュル鳴った。 人間ドリフトをしながら廊下に躍り出て、教室を一目散に目指す。 幾ら運動神経が良くても頭が回らなきゃ動物と一緒だ。 「この馬鹿オーナーぁ!」 「うるせぇこのアホ神姫!」 扉を半ば蹴破る様に教室に入り、宗太を席に着く。 と、言っても担いだ鞄を机の上に叩き付けるだけだ。 鞄の中に入っていた私は、当然今の衝撃で外に投げ出された。 一応、投げ出される角度を計算修正して馬鹿宗太の隣の加奈美の机に降りる様に投げ出される。 「聞いてよぉ加奈美ぃ! この馬鹿、私の詩を馬鹿にするのよぉ!」 宗太の幼馴染にして馬鹿宗太に代わる私の唯一の理解者、加奈美。 きっと加奈美なら私の気持ちを分かってくれる筈だ。 「あら、酷いわね」 宗太のぼさぼさ頭とは違う、綺麗で長くて艶やかな黒髪。 まさに女の子、って感じだ。オーナーなら加奈美の方が良かった。 「詩を書くサイフォスが可笑しいとか言うのよぉ!」 「神姫が詩を書いても何も問題無いのにね」 ああ、やっぱり加奈美は解ってくれている。 それに比べて宗太の馬鹿っぷりと言ったら……! 「ったく、ぎゃあぎゃあうっせぇな……」 「何よこの馬鹿宗太ぁ」 男の癖に影でこそこそ言うなんて、最低だ。 加奈美のこの態度を見習えこの馬鹿。 現にこうやってお行儀よく椅子に座って、ちゃんと鞄は机の脇にかけてあって。 机の上には一時間目の用意がしてあって。その上には神姫が座ってて。 「……誰?」 エウクランテ。 私の少し後に発売された武装神姫。 空中戦闘に秀で、アーンヴァルの対抗馬として開発された武装神姫。 そして、今私の目の前にいる武装神姫。 「でさぁ、宗太ったら変な武器ばっか買ってくるのぉ。アニメに出てきそうなバカでかい剣とかぁ変な棒とかぁ」 「そうなのか」 「そうなのよぉ。私は使わないって言ってるのにこの馬鹿ぁ剣ばっか買ってくるのぉ」 「しかし、それは宗太殿がパーシ殿の為を思ってではないのか?」 「それなら私の希望を聞いてくれても良いと思わないぃ? あ、私の事はパーシで良いわよぉ」 「む、確かにそれでは自分の希望を押し付けるだけだ」 「でしょぉ! 流石は加奈美の神姫ねぇ。話が分るわぁ」 時は昼休み。場所は食堂。 学生が唯一学校に楽しみを見出す時間と場所であるここは、当然の如く混み合っている。 学校の食堂にしてはかなり広い方にも関わらず、人口密集度は恐ろしい。 そんな真っ只中、二人掛けのテーブルに陣取り、私達四人は優雅な昼食を楽しんでいた。 「……たく、飯時くらい静かにしろっての。飯が不味くならぁ」 前言撤回。 この馬鹿、生意気にも大盛りC定食を食べながら水をさして来る。 馬鹿は馬鹿らしくヤキソバパン食べてれば良いのに。 「加奈美ぃ、この馬鹿黙らせてよぉ」 「ん~……お昼御馳走になってる身としては難しい質問ね」 加奈美はと言うと、馬鹿宗太のお金で買ったA定食を食べている。 すこし困った様に笑っているが、加奈美はもっと良いモノを食べてもバチは当たらない。 だけど確かに、確かにそれはそうでもある。人道的観点と義理人情的観点から言って加奈美はパーフェクトに正しいと思う。 ただ一つ、宗太が勝ち誇ったように笑ってること以外は。 「加奈美はこの馬鹿にノート見せてんだからもっと強気になっても良いのよぉ?」 「そうなのか?」 「そう、そうなのよぉ。あの馬鹿、授業なんか聞かないで寝てばっかなの。だからって加奈美にノート見せて貰ってるのよぉ」 「ノート見せるくらい御馳走してくれるなら安いくらいよ?」 そう加奈美は言うけど、授業中寝るのは馬鹿の自己責任だ。 責任は自身が取るべきであり、人にノートを見せて貰うなんてのは真面目に授業受けている人間に対して失礼だ。 「……宗太殿、授業を受けずに寝るというのは学生として如何なものかと思うが」 シルフィは本当に良い子だ。 加奈美に似て真面目で礼儀正しい。 そして、加奈美が切り分けた豚肉の生姜焼きを丁寧に食べている様にお行儀も良い。 「シルフィよぉ、そうは言うけどな。俺は朝は新聞配達、夜はコンビニでバイトしてんだ」 「む。その歳で仕事に精を出すのは宜しい事とは思うのだが、学生の本分は学業であると、私は考えるのだが」 「その本分を受けるために、バイトしてんだよ」 「そうなのか……成程。それなら仕方ない……訳では無いな。しかし、学校の為に働くのであれば……」 シルフィはいい子だけど、物事を論理的に考えすぎだ。 目には目を、論理の通じない馬鹿に論理を通す義理は無い。 「シルフィ、騙されちゃダメよぉ。この馬鹿は稼いだバイト代は全部神姫関係につぎ込んでるのよぉ」 「宗太殿……」 「四面楚歌ね、宗太」 「……うるせー」 今日この日、宗太に対する攻撃布陣が完成したと言っても過言ではないだろう。 トップへ 次へ -
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1143.html
――BGM:ドレミファだいじょーぶ―― さて「はじめてのおつかい」今日は花道家の生駒さんのお宅にやってまいりました! 今日おつかいに出る子はなんと神姫ですよ神姫。 「それじゃあにーの丞、このフクジュソウの生け花を☆×スタジオまでね。平気そう?」 「うにー! 大丈夫ですにー!」 「・・本当に?」 「にーだっておつかいくらい出来るんですにー!」 「本当の本当に?」 「むー、にーはもう子猫じゃないですにー! いちにんまえですにー!」 「・・・判ったわ。でも無理はしないこと。それから、知らない人には付いて行かない事。いい?」 「わかったですにー♪ 行ってきますにー!!」 「いってらっしゃい・・・ああでも心配・・・(がさごそ)」 さて、心配そうなお母さんをよそに、にーの丞ちゃん(0歳2ヶ月)が初めてのおつかいに出かけます。でも鉢付きの生け花は重そうですね~。 「にー。にー・・・」 通り道の商店街を横切りながら、頑張って生け花をはこぶにーの丞ちゃん。でも、やっぱり神姫にそのサイズは辛いんじゃないでしょうか? 「お・・重いけどがんばるですにー! かぢばのばかぢから~! うにー!」 そんな最初からクライマックスでは無理があるでしょう。・・あれ? 道を誰かが塞いでいますよ~? 「うむ、父君とたま子が気を利かせてくれた休日とは言え、たま子が一体どんなへまをやらかすかと考えると気が気でないのう・・・。いかんな。妾も妹離れをせんとな」 「うにー! うにー!」 「・・・何じゃ、子童? そなた大層な活け花を携えてなんとする?」 おや、その種型神姫さんが話し掛けてきましたよ? いいんですかね~? 「え~っと、知らない人には付いていっちゃいけないですにー」 「・・・殊勝じゃな」 「でも、おねーちゃんは神姫だから大丈夫ですにー♪」 「・・・臨機応変じゃな」 え~、本当にいいんでしょうかね。あ、でも通行人に聞いたらその神姫、なな子さんはこの辺じゃ有名な神姫らしいですね。いい人そうですし。 「その花は、主の使いか? 福寿草とはいい趣味をしておる」 「おかーさんが活けたお花はかっこいいですにー♪」 「妾も、そう思うよ。コレも何かの縁じゃ。妾とて非力ではあるが助力しようか?」 「ダメですにー! これはにーのお仕事ですにー! ひとりでできるんですにー!」 「・・・たま子・・妹と、同じ反応じゃな」 「うにー?」 「いや、済まなかった。ではこうしよう、少し待っておれ」 ・・・あら? なな子さん、いきなり八百屋さんに入っていって台車を引っ張り出してきましたよ。 「そこの八百屋とは馴染みでな。お主の事を話したら台車を貸してくれた。これなら、おぬしの力で運べるであろう?」 そう言いながら鉢を台車に載せてくれるなな子さん。親切ですねー。 「おお! らくちんですにー!」 「笑顔まで、たま子にそっくりじゃな。では・・・」 「・・うに? どうしてついて来るんですにー? にーはひとりでおつかいするんですにー」 「いや。ただ・・・妾の散歩のコースとおぬしの行く方向が同じというだけじゃ。“たまたま”な」 「にー?」 「うーん、今どこですかにー?」 「ここの電柱、薄汚れておるな、見苦しい。まあ住所表記は見えておるのでまだ良いか」 「か、階段こわいですにー・・・」 「バリアフリー、というモノは神姫にも当てはまるかも知れぬな。こちらのスロープの方が余程歩き易いとは思わぬか?」 「あ、赤いしるしきれいですにー!」 「そういえば前たま子が赤いカエルをみて驚いておったのを思い出した。自然界では時として赤を危険色として扱う。人間もそれに習う辺り、意外と動物的部分を失っておらぬのかもな」 「えと・・☆×すたじお・・・。つ、着いたですに~!!」 目的地に着いた喜びで飛び跳ねるにーの丞ちゃん(実際は殆どなな子さんのお陰なんですけれど)。 「さて、妾はそろそろ・・・」 「うーん、大丈夫かしら・・・」 「うむ? ご婦人、関係者であれば堂々と中に入っては如何か?」 「・・え!? あ、ああ、誰の神姫か知りませんけど、お気遣いあ・・」 「あーっ!! おかーさん、どうしてここにいるんですにー!?」 「にーの丞!?」 あれ? 誰かと思えばにーのお母さんじゃありませんか。スタッフにも内緒で何してるんですか? 「にーの丞、そなたの母君か? まさか先回りして・・?」 「えっ!? いや違うのよ? 別に全然心配だったからとかじゃなくって、うっかりにーに届け先の楽屋を教え忘れたのよ? 決して頼りにしてなかったなんて事全然ないんだからね!」 「・・・語るに落ちておるぞ、ご婦人」 「いあや! そんな事はなくて・・・あの・・・ええと・・・」 「すいません、そんな所で立ち往生されるとスタジオ入れないんですが?」 あれあれ、漫才なんてしていたら通行の邪魔になっちゃっていますよ皆さん。 「ん?ああ、悪かった。だが妾達は・・・」 「お届けものなのですにー」 「あ、その生け花はきっと私の楽屋のです・・・あれ? まお? 今日は収録無い筈だろう?」 「うにー? にーはにーの丞ですにー」 「人違い? そんな筈は・・・」 「あ~~~!? 貴女って・・神姫タレントのイブリンちゃんじゃない!? 主演の『武装神姫2036』いつも見てるわよ!」 「はい、どうぞですにー」 「有難う」 立ち話もなんですから、と招かれたイブリンちゃんの楽屋で無事おつかいを果たすにーの丞ちゃん。良かったですね~。 「それにしても、届け先があのイブリンちゃんの楽屋だなんて。ファンなのよ私!」 「妾もテレビドラマの『武装神姫2036』はよく見ておるぞ。毎回ドラマとは思えない程思い切りの良いドタバタギャグで妹共々楽しく見させてもらっておる」 実際凄い人気ですよね『武装神姫2036』。・・・って私他番組の事いっていいんでしょうか・・・。 「はは、有難う。でもちょっと複雑。実はあれってほとんどノンフィクションなんだよ。私やマスターも本名で出ているし」 「ホントに居るの!? あの金持ち会長とか!?」 「ええまあ。と言うか、そのアホ会長のせいで、私はこんなペイントを年中することに・・・」 「そうじゃ、気になっておったのじゃが、その白いスーツカラーは確か耐水ペイントでは無かったか?」 「ええ、そうなのだけれど・・それを見たスタッフが悪乗りしてスピンアウトでこのカラーの神姫を発売したんだ」 「それ、にーの事よね。私もドラマの影響で買ったのよ~」 「うにー?」 「それで、その販促の都合で私は強制的に年中このペイントなんだ。全くいい迷惑ったらありゃしない・・・しかも撮影の度に塗り替えで・・・」 「人気者も大変じゃな」 「大体、私が忘れたいような出来事ばかり取上げられて、そのお陰でマスターの頭上に何度も目覚まし落とされたり、まおの馬鹿に何度も無駄なツッコミ入れたり、一番恥ずかしいセリフばかり何度もリテイク食らったりetcetc・・・。ぶっちゃけ花でも見て心を落ち着かせないとやってられない(泣)」 うわー、イブリンちゃん、まじで泣き崩れちゃいましたよ? 「にー。元気出すですにー」 「・・・妹の姿をした神姫に慰められるなんて、皮肉だな」 「妹の姿、か。・・・そもそも、我々にとって『姉妹』とはどういう意味を持つものなの、じゃろうな」 「なな子さん、あなたにも妹が居るんだ」 「ああ。目を離せないような迂闊者ではあるのじゃが」 「私の所もそうだよ。馬鹿ばっかりで、手間ばっかりかかって仕方ない」 「じゃが、血の繋がりなど持てない我々に、それがどれほどの意味があろうか?」 「にーの丞ちゃんには悪いけれど、こんな風に、妹の姿を模倣されたりだってするのにな」 「うに?」 「・・・妾達は所詮「道具」として生まれた身、都合良さでしか関係を持てぬのだろうか・・・」 「・・・別に、いいんじゃないのかしら?」 「「・・・え?」」 「人間だって、義理の兄弟や親子だって居るんだし、そうでしょ?」 「だけど、後付けの関係なんて、何時壊れるか・・・」 「だって結婚は赤の他人とするわよ?」 「・・・言いえて妙、じゃな。結局結婚も「他人」を「家族」にする行為という訳か」 「実際私の夫なんて出来の悪い弟が一人増えたようなものだし」 「・・・それって本当にいいのですか?」 「いいんじゃないのかしら。上手くいってるなら。貴方達も、聞いている限り、そう思えるけれど?」 「・・・まあ、あのマジョーラバカは私くらいしかしつけられないしな。・・・だけど」 「・・・たま子に「お姉ちゃん」と呼ばれない事など、想像すら出来ぬな。・・・じゃが」 「まだ自信ない? じゃあ、にーはどう思う?」 「うに?」 「こんな妾でも」 「こんな私でも、姉妹と呼べる家族がいていいの、かな?」 「にーのおねーちゃんになってくれるんですにー? にーはおねーちゃんがいっぱいの方がうれしいですにー!!」 「・・・いや、にー、そういう意味じゃなく・・・」 「ぷっ・・あははははは!」 「ふふ、ふふふ、成る程な」 「え? 2人とも?」 「妹って、みんな我がままみたいだね」 「そうじゃな」 「うにー♪」 「・・・ところで、そっちの番組スタッフさん? にーの丞ちゃんが届けた時点で収録終了の筈なのに、何でまだカメラ回しているんですか?」 いや、事情プロデューサーに話したら「そりゃ面白い! 特番でドキュメンタリーにしよう!!」って言われまして・・・。 「・・・勘弁してください(泣)」 「芸能界は、大変じゃな」 「か・・・かくなる上は・・・。獣牙爆熱!!!」 ちゃんちゃん(?) 目次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1243.html
パイソン(ギャグです) 永倉辰由(ながくらたつよし)。 近隣を支配する極道。伊藤組組長、伊東観柳斎の懐刀とまで呼ばれる男である。 実質、伊藤組のナンバー2と言っても過言ではない。 誰が呼んだか通称“パイソンの辰”。 先祖代々極道で、古くは江戸の賭博を取り仕切っていた顔役、永倉興三郎まで遡れる由緒正しい生粋のヤクザ者である。 「おう、伊藤の所の永倉じゃねぇか?」 不意に背後でした男の声に、辰由は懐に手を入れて振り返る。 「………これはこれは、四課の原田刑事。お久しぶりです」 声の主は原田大介。 捜査四課、暴力団対応の刑事で荒事のプロだ。 「今日は如何なさいました? 界隈は平和そのものですよ?」 顔見知り相手なので、彼の二つ名の由来となった懐の中の凶器は出さずにおく。 「確かにここの所は何処も大人しいもんでな、逆に俺は何かの前触れじゃねえかって踏んでるんだがよ?」 「ははは、原田刑事のカンですか?」 苦笑する辰由に原田は一歩近づいた。 「おう、永倉? てめぇ、何かヤバイ山企んじゃいまいな? あぁ?」 「ご冗談を、自分は真っ当な会社員です」 「…けっ、よく言うぜ。パイソンとまで呼ばれた男がな」 「お恥ずかしい限りです」 「今も持ってるんじゃねぇだろうな?」 「まさか、流石にアレを持ち歩くほど界隈は荒んでいませんよ」 平然と言い切る辰由。 実はしっかりと懐にはソレを隠し持っている。 だが、流石の原田も見せてみろとは言わない。 それを見たときが自分の死ぬときだと分かっているからだ。 「けっ、まあいい。何か起こして見やがれ、その時は観柳斎の野郎もろともブタ箱にぶち込んでやる!!」 「では、それまでに夜道で事故になど遭われませぬよう、お気を付けを………」 そう言って辰由と原田は互いに背を向けた。 「…って所で仕事おしまい。んで、最近調子はどうでぇ辰よう?」 くるっと振り返る原田。 辰由も再び振り返り、再度原田と向かい合う。 「…相変わらずですが、先日ウチのシマに粉持ち込んだ外人が居ましてね。…締め上げて背後関係を吐かせたんで、後で引き渡します」 「で、流れたのはどれ位だ?」 「二、三件際どかったようですが、一応回収には全て成功しています。モノは処分してしまいましたのでお引渡し出来ませんが………」 「そうか、相変わらずの手並みだな。しかし、ココに粉持ち込むたぁ馬鹿な外人だぜ」 「最近はそういう輩が増えましてね、こちらは結構大変です」 「…悪いな、警察ってのは防犯にゃあ、あまり役にたたねぇからな。お前らの尻拭いしか出来んのが歯痒いぜ」 タバコを取り出し火を着ける原田。 「原田さん、ここ、路上喫煙禁止区域です」 「んあ? ちっ、しゃーねぇな。ったく、ウゼェ法律作りやがって」 「刑事の言葉じゃありませんね…」 辰由は苦笑した。 「そういや、最近辰の字は吸わねぇのな?」 「ええ、お嬢が『辰はタバコ臭いから嫌い』と言って以来10年吸ってません」 「ああ、伊東ん所の美空譲ちゃんか? ちったぁでっかくなったのか?」 タバコを仕舞いながら原田が尋ねる。 ちなみに、タバコを捨てないのはポイ捨て禁止だからではなく、勿体無いからだ。 後でもう一度火をつけて吸うつもり満々である。 「そうですね、お嬢も高校に上がってからは随分と元気になられまして」 「そいつは良かった。…小学の最後ら辺か? あんときゃ随分酷かったからな………」 「フェータさんのお陰ですよ」 お嬢、伊東美空の神姫の名を辰由は口にした。 「…ああ、嬢ちゃんが連れてる人形か。―――そう言やぁ、武装神姫って言うのはアレのことか?」 「ええ、アーンヴァルですね。原田さんも神姫に興味がお有りで?」 「いや、そうじゃなくてな。なんでも最近神姫センターに幽霊が出るって言うんで、二課の武田が動いてるんだよ」 「―――幽霊、ですか?」 「ああ、何でもバトルロイヤルって言うのか? アレに参加していない奴が乱入してくるらしい………。俺には良く分からないんだがな?」 「バトルロイヤルに乱入………。不可能だとは思いますが………」 「ああ、武田もそう言ってたぜ。まあ、とにかく美空嬢ちゃんにも気をつけるように言っといてくれや」 「心得ました」 「さて、それじゃあ俺は聞き込みに行くとするか」 そう言って原田は再度背を向ける。 「原田さん。パチンコ屋で遊ぶ事を聞き込みとは言いません」 「良いんだよ、あれはパチンコ台と俺との会話なんだ、立派な聞き込みじゃねぇか?」 「………何時もの店でしたら、パチスロ神姫の2列目、右端がお勧めです」 「何時もすまねぇな」 「いえ、それではまたいずれ………」 そう言って辰由も背を向ける。 「そう言や辰よう? お前ぇ、武装神姫に詳しいのか?」 「………ご冗談を、風俗の仕切りの関係で身についた知識です。………仕事ですよ」 「そうか」 そう言って原田は今度こそ歩み去った。 「ふぅ」 マンションの玄関で電子鍵を開けてロビーに入った。 他ならぬ永倉辰由の住居である。セキュリティは水準以上を保っている。 エレベーターのボタンは『5』最上階の一室が彼の住まいであった。 「帰ったぞ」 「お帰りなさいませ、だんな様」 帰宅した辰由を、見目麗しい少女が三つ指を着いて出迎える。 「お風呂とお食事の用意は整っておりますが、如何なさいますか?」 「先に風呂にしよう。ビールを用意しておいてくれ」 「畏まりました」 そう言って少女は部屋の奥へと消える。 「ふ」 アレを拾ってからもう随分になる。 最近は色々な事を学習し、辰由を驚かせることもしばしばあった。 皮靴を脱いで、女物のローファの横に並べると、辰由は風呂場に向かって歩き出す。 「あ、辰由~。お帰り~」 「ぶぼおぉっ!!」 いきなり居間から顔を出した少女に辰由は吹き出した。 「おっ、おおおお」 「オリビアを聴きながら?」 「じゃなくて、お嬢が何でココに!?」 「辰由居るかな~って思って来て、ピンポ~ン鳴らしたさ。そしたらあの子が鍵開けてくれた」 「~~~~~~。 \(@O@)/」 永倉辰由(ながくらたつよし)。 近隣を支配する極道。伊藤組組長、伊東観柳斎の懐刀とまで呼ばれる男である。 実質、伊藤組のナンバー2と言っても過言ではない。 誰が呼んだか通称“パイソンの辰”。 先祖代々極道で、古くは江戸の賭博を取り仕切っていた顔役、永倉興三郎まで遡れる由緒正しい生粋のヤクザ者である。 そんな彼が神姫を保有していることが発覚した瞬間であった。 「プリンちゃんって言うんだ~、可愛いねぇ~」 辰由の同居人である神姫を手に乗せ、頬ずりする美空。 そんな彼女に縋り、額を床に擦り付ける“パイソン”辰由。 「お嬢、如何かこの事は内密に!!」 「ど~しようかな?」 「お嬢ぉ!!」 「あはは、おっけーおっけー。でもその代わり一つだけお願い聞いて?」 「分かりやした。何なりと」 返答は即答。 今の辰由は必殺のパイソンでべ○ータとかフ○ーザだって素で倒せる!! しかし、美空の要求は彼の思考の斜め上を音速飛行して行った。 「それじゃあ、今から対戦しに行こう」 「ぶぼおぉっ!!」 再び吹き出す辰由。 …如何でも良いが、さっきまでの渋い極道の面影は欠片もない。 もはや単なるギャグキャラと化した辰由は思考回路をオーバードライブさせる!! (プリンを連れて外に出る!? 馬鹿な、そんなことは不可能だ!! しかし、お嬢は本気だ。逆らえば間違いなく言いふらす!! お嬢はそういうお人だ、間違いない!! ならば如何する!? 考えろ!! 考えるんだ!! クールになれ、永倉辰由っ!!) 上記の思考が、彼の脳を通過するのにかかった所要時間、僅かに0.0275秒っ!! それは最早光すら超越した高速思考!! 今の辰由は光速拳のライトニ○グプラズマとか余裕で見切るっ!! そんな彼の努力に天啓が報いた。 (そうだ、俺にはコレがある!! 俺にはこの“パイソン”があるじゃないか!!) そう、それは実に簡単な回答だったのである。 (俺とプリンちゃんが出歩く姿を見た奴を、全部このパイソンでぇ!!) ソレを美空に使うという発想が無いあたり、観柳斎が全幅の信頼を置くだけのことはある。 だがしかし、それは大量殺人ルートです。 「いや、辰由。恥ずかしいなら変装でもすれば良いじゃない?」 連れ出すのを勘弁するという思考が無いあたり、美空は何処まで行っても美空だった。 「…変装?」 「そうそう。グラサン変えてマスクでもすれば誰も辰由だとは分かんないわよ?」 「なるほど、変装ですか………」 そう言って辰由は大きく頷いた。 その日、ゴスロリドレスを着込んだヒゲ面オカマが、神姫センターに現れたという。 武装神姫、“シュメッターリング”のプリンちゃんを引き連れて。 おしまえ 二段オチ 美空「そう言や辰由って、何で“パイソン”って呼ばれてるんですか?」 フェータ「拳銃のコルトパイソンが武器だからですか?」 辰由「いえ、殺人ジョークが武器だからです」 美空「モンティ・パイソンかよ!?」 こんどこそおしまえ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2004.html
第壱話 ~2036年・4月15日午前10時30分~ ピリリリリリリリ 半ば巣と化した寝床の枕元に置いた目覚まし時計がけたたましく電子音を鳴らすが、 この部屋の主であり、この物語の主人公である黒崎 優一は空手チョップでアラームを切った。 「マスター、起きてください!お休みだからってゴロゴロしていたら体に毒ですよ!」 彼の武装神姫・アーンヴァルタイプのアカツキが起こしに来た。 彼女の髪はアーンヴァル特有の金髪ではなく、どちらかというとアッシュブロンドに近い感じがする。 彼女が来たと言うことは朝寝坊予防の第二防衛ライン発動、と言った所だろう。 「うーんアカツキ、11時になったら起こしてくれ。見逃してくれたら昼飯はソース焼きそばにしてやる」 そう言うと優一はごろんと寝返りを打ってアカツキに背を向けてしまった。 「了解です。ってそうじゃなくて!!こうなったら最後の手段です!」 一瞬ながら喜んだアカツキの右手にはスタンガンが握られている。 それを優一のうなじに押しつけるとスイッチを押した。 神姫サイズのため、出力は高くてもせいぜい3ボルトぐらいだが、人一人をたたき起こすには十分すぎる出力だ。 端子部から青白い火花が迸る。たまらなくなって悲鳴を上げながら優一は飛び起きた。 「ギヤァァァァァァァァァ!!アカツキ!ものには限度ってモノがあるって起動したその日に教えただろ!!」 「だってジェニーさんが『スタンガンは最高の目覚ましです』って言ってましたよ!」 「それはあの店長の例だろ!真に受けるな!!」 頬をふくらまして反論するアカツキ。しかし、優一が言ったことが正論だったので言い返せないでいる。 「ったく、せっかく気持ちよく寝ていたのに。しゃあない、ステーションに行くぞ。今日は丸一日だ」 そう言うと優一はいきなり寝間着のスウェットを脱ぎ始めたのでアカツキは慌ててその場を後にした。 とっぷ 零之弐
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1221.html
第二話「服」 午前6時50分ごろ 「…ん…」 「起きたか?ヒカル」 「ん、んぁ~…おはよう、形人。今何時?」 「何時もなにも、今日は3日の6時だ。1日中寝てたぞ、お前」 「あら…」 「それよりもホラ、買ってきたぞ」 「何を?」 「服だよ。覚えてないのかこの神田ラヴァー」 「神田ラヴァーは余計! …事実だけど」 今回形人が買ってきたのはダイソーで売っている「世界のお友達シリーズ」のカナダとイギリス。 靴以外はそのまま神姫が着ることが出来るサイズとなっている。 「それよか着てみろ。サイズは合うはずだ」 「え…でもダイソーの商品って色移りするんじゃ…」 「洗ったから多分大丈夫だ」 カナダの場合 「この靴下…生地が厚くて立ちづらい…」 「我慢しろ、元々神姫用じゃないからな」 イギリスの場合 「よく似合ってるぞ」 「?、そう?」 「帽子だけは根本からサイズが違うけどな」 「あと…ズボンがキツイ…」 ふと見てみると、パッツンパッツンになってて、まるでスパッツである 「…我慢しろ。神姫用じゃないから」 「…そのセリフ、二度目…」 「とにかく、くまさんも服も…その……ありがとう」 そう言いながらおととい買ったくまのキーホルダーを抱くヒカル 「(…可愛すぎるじゃないかこのヤロウ!)…あー、すまんヒカル。ちょっとお母さんを起こしてきてくれないか?」 「?わかった」 そう言って部屋を出て行くヒカル 「(パタン)……」 「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおっ!!!(ゴロゴロゴロゴロ)」 服を着ていると印象が変わるんだなと実感しながら、悶絶する形人であった。 いとふゆ オマケ 「って何で悶絶してんの形人!?」 「ふふっ。ヒカルちゃんの可愛さに撃墜されたのね♪、ベイルアウトできずに」 彼の母もこんなんだった。 次回予告 学校、行ったことないんだよね… どんなところだろ? 頼んでみるかなぁ… 次回「学校」(N:ヒカル) 武装神姫でいこう!?に戻る トップページ